海辺にて

(毒ガス貯蔵庫付近)

毒ガス貯蔵庫跡
戦時中、この島は秘密の工場であった。地図からも所在が抹消されていたくらいである。毒ガス資料館はぜひ見学して欲しい。しかし資料館を見ずとも、島中に点々と残る不穏な建築物跡を見れば、この島が単なる歴史の跡地ではない事は分かると思う。
この貯蔵庫跡地も、わざわざ斜面を切り開いて埋め込むように建築している。周りが平坦地であるだけに、普通でない目的のためである事は容易に分かる。不気味なのである。
もし大久野島を訪れる事があったなら、ここと発電所跡と、あと山頂付近にある砲台跡は訪れてみて欲しいと思うのであった。

(注意:ワレンの巣穴のように斜面に空いている穴は良いが、平らな地面に空いてる穴には稀に兎の死体が干からびてたりするので、気の弱い人はお気をつけて。)


貯蔵庫跡正面。奥に深いようだが、当然立ち入り禁止である。本当に危ないので、入ってはいけない。



貯蔵庫跡からちょっとだけ北に行くと、草地に続く砂浜がある。この草地には、余り多くは無いが兎が暮らしている。斜面を見れば、ブッシュからこちらをひっそり窺っている兎の姿を発見できるだろう。海岸沿いには日向ぼっこしながら草を食べている兎も見られる。



ただ、宿舎前付近にいる群れと違って、身体に障害がある傾向が若干多く見られる。体表がただれている子も多い。この写真の子も、前足内側に血の止まらない腫瘍っぽいデキモノがあった。腰から尻にかけて茶色いが、これは血液がこびりついた跡である。元は白兎だったらしいのだ。しかし、それでも彼等は元気に跳ねている。跳ねられなくなる事は即座に死に繋るのだから当たり前であるが。



割と若い個体である。一見健康そうであるが、恐らくは身体は蝕まれ始めているのだろう。



これもデキモノの子である。前の写真と共に首が傾いている(斜頚)のがお分かり頂けるだろうか。
普通ヨーロッパあたりのワレンでも、身体の悪い個体はいるかもしれないが、この島ではそういう子の比率が明らかに高すぎる。大抵の子は涙目である。農薬もある程度は撒布しているかもしれないが、それにしても砒素の影響が小さいとは考えにくい。

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夕方の兎たち

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鹿川 伊知郎(Ichiro Shikagawa <shikapon@jiru.com>)
Julius Guilbert Trading Co.