1

1999年7月19〜22日


忙しい毎日を更にクソ忙しくして日程を都合しまくり、ようやく行って来ましたトムラウシ。4日も仕事休むのは思いの他大変だったけども、その価値はあったのでした。
もっとも実際は天気の都合でトムラウシ山自体にはふもとまでしか行かなかったんだけど、ここの場合、そこまで行くのが大変なので、やはり沢山休まねばならないのであります。


トムラウシって何?という人の為にちょいと解説。トムラウシってのは大雪山(だいせつ・たいせつ、どちらでも可。役所によって呼び名が違うんだな)の山の一つ。大雪山という山自体はなくて、北海道中央部の山々をまとめてそう呼ぶ。トムラウシは標高は2141mで、高い方に入る。ちなみに北海道の山の標高に1000m足すと、だいたい本州の山と同じグレードになるんだそうだ。つまりトムラウシは3000m級という事。(正直なところ、+1000mは足しすぎだと思うが。)
トムラウシは大雪山の中でも最も奥にあるので、ふもとまでのアプローチが長い。どの登山口からも大体8時間前後必要で、そこから更に400m登らなければならないので、日帰りはほぼ不可能である。そんな所から、山好きにとってトムラウシは「一度は登りたい」あこがれ的な場所であるらしい。しかし私は山好きじゃなくて単なる動物好きなので登山時間は短い方が良いのだが、しかしナキウサギと言えばトムラウシはどうしても避けて通れない山なのだから仕方ない。
ちなみに昔地元では、「富村牛」という当て字を使っていた。トムムラウシ?


19日

夕方芽室のうちんちに、KさんSさんと三人で集合、装備を確認してから沼ノ原登山口へ向かう。夜8時過ぎに到着、駐車場にテント設営してその日は登山口泊。新得のスーパーで買った弁当を食って寝る。


20日

朝4時起床、テントをたたんで5時出発。18日までの雨で登山道はグチャグチャ、すんげー歩きにくい。途中標高1300m付近に水場があるのだが、ここで既にバテバテ。


28時頃、沼ノ原・大沼到着。左の画像は沼ノ原に群生していたモウセンゴケ。食虫植物って実は好きな私。これで結構気力を取り戻す。ちなみに表題の画像は沼ノ原のとある小沼。しかし帰ってから調べてみたら、ただのモウセンゴケにしては葉が長い。普通はもっとまあるい形なのだ。尾瀬だけにあるナガバノモウセンゴケそっくりだが、これって結局何?


3

さらにズンズン進んで五色ヶ原を横断する。なにせ距離があって、終点の五色岳頂上に到着したのは夕方4時。途中撮影やら休憩やらで止まっていた時間を差し引いても、8時間は歩いていた勘定になる。
上の写真は五色岳頂上。バックは忠別岳。顔はそれぞれモザイク掛けてますが、右がKさん、左がSさん。んで中央が私。なんで俺だけザック背負ってるんだろう?


4

この日は、忠別岳の避難小屋そばにキャンプ。休日という事もあって小屋は満杯、テントの方が遥かに快適だった。もっとも画像を見れば分かるように、雪渓の脇にテントサイトがあって、寒さに弱い人には向かないかもしれないけど。
トムラウシ近辺には沢山(は言い過ぎか、割と、にしとこう)水場があって、このサイトもすぐ近くに水場がある。水がふんだんに使えるんだったら消化の良いものを、と考えて食事にはスパゲッティを持ち込んだ。登山用品店なんかに良くあるα化なんちゃら、などというクソ不味い登山用じゃなくて、フツーにスーパーとかで売ってるパスタを鍋で盛大に茹でて、これまたフツーのミートソースを掛けて食べたのだが、アウトドアなKさんには「そんなん山で食う奴初めて見たぞ」とか言われてしまった。そんなもんですか〜


21日

さて一夜明けてこの日はトムラウシ山のピークハントである。朝飯はパン。でその道々で動物、ていうかナキウサギのポイントをチェックして行こう、というのが元々の目論見なのであった。


5時ごろキャンプを出発、まずトムラウシの麓のヒサゴ沼に向かう。しかし道は高山植物各種取り揃えております状態で、KさんSさんとも花の写真を撮る為に頻繁に止まるもんで、全然距離は捗らないのだった。

5

エゾツガザクラ群落に咲くチングルマ。エゾツガザクラはピンクなのだけど、濃いピンクから白に近いような淡いピンクまで色々あって楽しい花だ。チングルマはどれも一緒。


(以下、枠のある画像はマウスを上に置くとズームするです。でもJavaScriptはONにしといてね)


6

途中、エゾシマリスなんかも顔を見せる。然別近くほどではないが、登山者が餌をやっているらしく結構平気で寄って来る。まあこいつらはお馬鹿さんなので仕方ないか。


途中から雪渓になる。雪渓だとどこを歩いても植物を踏み荒らす心配が無いので、ガレ場へのアクセスには都合が良い。途中何カ所かのガレ場に寄ったが、ナキウサギはどこにでもいるようで鳴き声だけは良く聞こえる。頻繁に出てきたのはそのうち2カ所。


ヒサゴ沼に到着、昼ご飯、と言っても、チョコレートとなんとかゼリーとゲータレード、というタダの行動食で済ます。バーナー持参のKさんにお湯を貰ってコーヒーも頂く。さてここには山小屋とキャンプサイトがあるのだが、酷い場所だった。忠別も良いとは言い難いが、しかしここのマナーは最低だ。連泊して小屋を占領してるらしいオヤジども。昼に小屋にいるってのがそもそも不自然な話で、大体何しに大雪まで来てるのか理解に苦しむ。他の登山者にはメチャクチャ迷惑な存在である。なんか沼で米といで米粒こぼしまくってたし。そしてトイレ。まー汚い事この上ない。ハエの大群がいて、トイレはまるで養蜂場のような音を立てている。問題はこのトイレから滲み出す○○○汁が、見るからに沼に流れだしているだろう事だ。なんかもう破壊されまくり〜状態なのである。「いやーここに泊まらなくて良かったねー」とシミジミ頷き合う3人だったのでした。こんな小屋、撤去した方がいいぞ>お役所。


さて、ここからトムラウシ山にアタックする予定だったが、なんか気温がやけに高くなっていて、こりゃ登ってもナキウサギなんて出ないよな〜、という雰囲気濃厚になってきた。協議の結果、今回はアタックは中止して来る途中で見つけたガレ場で撮影してみる事に。念のため、白熱した協議の議事録を残しておく;

K:「これじゃ〜岩が熱くってナキウサギ出てきそうに無いねえ」
S:「あ、やっぱそう思います?、ゴクゴク(水を飲む音)」
私:「んじゃ止めましょう。ゴクゴク」
K:「やめようやめよう。ゴクゴク」

まあ登山屋が聞いたら怒られそうな会話だが、我々は写真屋であって登山屋じゃないので、こんなんで良いのである、という事にしといて頂戴、お願い。


という訳で、午後はガレ場に戻った我々。然別とは比べ物にならないほど広い岩場にてんでバラバラに陣取って、好き勝手に撮影を楽しんだのでした。


7花(キバナシャクナゲ?)脇に出てきた子供。最初のうちはこっちがちょっとでも動くと「バビューン!!」と逃げてしまい、撮影しづらい事と言ったら相当なものだった。


8これは大人。こんな風に瞑想姿勢を取る事は少なかった。下界のガレ場とはエライ違いである。しかし下界のに比べて、みな体が小さめである。それだけ生存環境が厳しいのだろうか。


9エゾコザクラの前で。あまりコザクラは好きでないらしい。


10チングルマの花畑で対空監視。なんか耳がでかい。


11下界でも良く生えてる草を食う。この草は、だいたいの奴が食料にしているようで、ナキウサギにとっての米かパンといった所のようだ。


12子供。顔がメチャ可愛い奴で、大人ほどは人間を恐れていなかった。しかし動きが早くて撮影は大変だった。


13夕方、キャンプに戻ろうと歩き出した我々の前に現れた2匹。ちょっと分かりにくいけど、左にも一匹同じ方向を向いてる。雲で暗くて絞れなくて、ピントを両方に来させられなかったのがスンゲー残念なんでありました。手にしていたレンズが300mmだったというのも敗因かも。


夕方6時キャンプ着。愛媛大学のワンゲル部(ジャケットにそうプリントしてあった)とかいう団体がすぐ隣にテントを2つ張っていて、我々のテント入り口に荷物が置いてある。鍋や食器も散乱している。所詮は今時の大学生、マナーなんて期待しちゃいないが、もうちょい上級生はしっかり統率しないとイカンのではないかねー。まあおいらの大学生の頃を振り返っちまうと、偉そうな事は決して言えないのだががが。あはは。とりあえずオヤジ・オバハンよりは我慢出来るのは間違いない。
それよりも水場を占領してたババア二人組。隣で水場が空くのを待っていたら、「この下でも水汲めますよ」とかぬかしやがった。てめーらの泥靴が入ってる流れの下流で給水できるかよ! その上、やっと空けたかと思ったら、更に上流で歯磨き始めちまって、よっぽど蹴り倒そうかと思ったっす。おめーらみたいなのはじぶんちの庭から外に出るな、ボケ。やっぱり避難小屋には寝台なんか用意しないで、緊急用に徹して宿泊なんてさせない方が環境の為にはいいね。


22日

下山の日。「下山だけで何時間もかかるんだから、今日は撮影はしないっ!」とか宣言していたKさんだったが、その20分後、忠別から五色岳に登る途中であえなく挫折して撮影してしまった事はナイショである。


14

挫折の原因コマクサ。風が強すぎて他の植物が育たないような荒れ地だけに生息する。という事になってるけど、実際はタダの草地にも生えてたりするが。んで、これがなかなか可愛い花なのだが、荒れ地とは言え低温と高温にさらされて岩が砕けて柔らかくなっている所に生えてるので簡単に踏み込む訳には行かない。なんとか岩づたいに近づいて撮ったのが上の写真。背景が汚いぞー、などと言ってはいけないぞ。土踏まないで撮れるポジションはこれしかなかったんだから。


その後はもう、休憩もそこそこに歩き続けて下山。ほぼ7時間で踏破してしまった。途中の一番美味しかった水場で水を4リットルも汲んでしまい、重くなったザックに疲弊して登山口に到着した頃には息も絶えだえな私でありました。汲んできた水は次の日一杯で全て飲んでしまったけど、下界で飲んでも旨かったです、はい。


・1-5,14. EOS1n, EF28-70mmF2.8L, 絞り優先ほか色々、EBX, RVP, RAP
・6-13. EOS1n, EF300mmF4LIS, EBX, RDP2


Goto Shikapon Home Page

鹿川 伊知郎(Ichiro Shikagawa <shikapon@jiru.com>)
Julius Guilbert Trading Co.
Memuro, Hokkaido, JAPAN
Last Modified : Jul 28, 1999